【ルックバック】制作職や美大生に超刺さる😭!チェーンソーマン藤本先生の読切原作映画を視聴<ネタバレ>

雑談

【あらすじ】漫画で結ばれる”等身大の”友情・努力・勝利~

「チェーンソーマン」の人気漫画家、藤本タツキ先生が、2021年に「ジャンププラス」で掲載した読切漫画が長編アニメ化!

監督、脚本とキャラクターデザインは押山清高監督。
借りぐらしのアリエッティやエヴァの劇場版にも携わった監督さんです。

物語は、漫画づくりに情熱と純真を注ぐ2人の女の子を中心に描かれます。

学年新聞の一面で4コマ漫画を描いている主人公の1人藤野ちゃんは、友達も多い人気者。
藤野ちゃん本人も自分の才能に自信満々、得意げな態度を見せるシーンが多いです。

一方、人間不信で不登校・引き籠りの京本ちゃんも主人公の1人。
家に届けられる学年新聞に載っている藤野ちゃんの漫画作品が大好きで、藤野ちゃんを「藤野先生!」と慕っています。

活発で自信家の藤野ちゃん。
内気で気弱な京本ちゃん。

正反対の女の子が「漫画を描く」を通して強く結びつく。
そして大きな挑戦のための戦い、感動的な勝利を掴む物語です。

【起〜承】10代女子のまっすぐな感情と複雑な心境全部盛り

正反対の2人ですが、どちらも驚くほど努力家です。

藤野ちゃんは、自分が描く4コマ漫画に絶対的な自信がありました。

学年で、いや学校で1番絵がうまいのは私だし、漫画のストーリー構成もオチも完璧!
友だちも先生も家族も近所の人も絶賛してくれる!
自他共に認める才能の持ち主!それが私!

そんな、純粋な思い上がりでできた無敵感を、小学生スケールでしっかりと見せてくれます。
「私ってすごい!ヘヘン!」が映画開始10分以内でこれでもかと伝わってきて、ちょっぴりむず痒い気持ちになっちゃいます。

それが一変!
小学4年生のある日、隣のクラスの何やら不登校の京本とかいう奴が、これまで自分の独断場だった学年新聞の漫画コーナーに4コマ漫画を出稿してきたのです!

その漫画が化け物級の画力!!!小学生が独学で習得したとは思えないくらいのハイレベルなデッサンでした!!!

京本ちゃんの漫画を見るまでは、
「京本が誰か知らないけど〜、私に適うわけないじゃん。」と余裕たっぷりな態度でした。
京本ちゃんの漫画を見た瞬間、
時が止まります、衝撃で。言葉を失って、思考と世界が分断されます。(このシーンの心象描写が最高ですよ!)

京本ちゃんの漫画は、風景デッサンを4コマ漫画のように縦に並べただけのもので、起承転結の無い作品でした。
ただの風景画の羅列とも言えます。
ネタやオチをつける技術は、藤野ちゃんの方が上です。
ですが、圧倒的な画力差がありました。藤野ちゃんが敗北感に苛まれるには十分すぎる画力差でした。

「学校で一番絵が上手いのは私〜♪」と自負していたのですから当然ショッキングですよね。
遥かに上手い絵が、自分のステージで、自分の作品と並べられる形で掲載されたんですから。

大きな衝撃を受けた藤野ちゃん・・・
しかし、その後の藤野ちゃんの行動が本当に素晴らしいんです!

突然現れたライバルの作品に対して一切非難せず、京本ちゃんへの悪口(例えば、「不登校のくせに漫画描くなよ!」とか)も一切言わず、ただ、黙って、自分の画力向上のために絵の練習をし始めたんですよ!

ライバルへの強い対抗心を、自分を強めるための糧にしたんです。
敗北感や悔しさを、「負けるもんか!やってやる!」というプラスのエネルギーに換えたんです!
こんなにも「正しい対抗心」が他にあるでしょうか。

しかも「やってやる!」と決意した後の行動が本当に早く的確でした!

小学生のおそらく少ないお小遣いで、デッサンの参考書や画材を買います。
そしてひたすら描きまくる!!
授業中も描く!休み時間も描く!家でも描く!
家族との会話が減ってしまっても、テストの点数が落ちても、友達との付き合いがなくなってもずっと描く!
ずっと!描いて!描いて!描きまくる!何ヶ月も何年も!学年が上がってもずっと描く!

現役の美大生でも、大人でも、ここまで徹底した訓練をするのは難しいですよ。
というか無理ですよね。

思わず声に出して言ってしまいました。
「この子は必ず伸びる。上手くなる」と。(何様何目線)

結果、藤野ちゃんの漫画は画力・ストーリーともに大きく成長します。

その頃には小学6年生ですが、小6とは思えない程の正確なデッサンと、完璧なオチのある楽しい4コマを学年新聞に掲載していました。

一方、京本ちゃんの作品も藤野ちゃんの4コマの隣に並んでいましたが、掲載し始めと変わらず、風景画の羅列のような4コマ作品のままでした。

ライバルへの一方的な対抗心で大きな成長を遂げたのは、藤野ちゃんだけでした。

【転】主人公の表情・動作・声の全てが深い感情移入を誘う

小学校卒業の日、藤野ちゃんは担任の先生から「京本に届けてほしい」と卒業証書を託されます。
嫌がる藤野ちゃん。
「突然現れた画力化け物の不登校児童」以外の印象を京本ちゃんに対して持っていなかったのです。

それでも最後だからと、証書を届けに行く藤野ちゃん。
これが物語の大きな機転となります。

初めは居留守をしていた京本ちゃんですが、藤野ちゃんが家に来たことに気づいた途端、部屋を飛び出します。
長らく引き篭もり不登校だった彼女が、藤野ちゃんを追いかけて裸足のまま家の外まで追いかけて来たのです。

そして叫びます。
「藤野先生・・・!ずっと、ずっとファンでした・・・!」

純粋な憧れからの叫びでした。
引き籠りの数年間、京本ちゃんはずっと藤野ちゃんの漫画のファンだったのです。

ずっとライバルだと思っていた奴が、自分の熱心なファンだったのですから、藤野ちゃんは本当に嬉しくて舞いあがっちゃいます。

京本ちゃんの前では、ちょっぴり澄ました態度を取る藤野ちゃん。
「あなた、私のファンだったの?ふーん、そう。」のような感じ。
「別に、私はどうも思ってないけど?」のような感じです。
でも内心、めちゃくちゃ嬉しく思っていたんですよ!

その帰り道、藤野ちゃんは嬉しい感情と誇らしさが溢れ、思わずスキップするシーンがあるのですが、それが本当に素晴らしい!
子どもらしく喜びを表現する藤野ちゃんに愛おしさが止まりませんでした。

子どもは、自分を褒めてほしい、認めて欲しいと思うものです。
藤野ちゃんにとっての漫画は、自尊心を強める大切な要素でした。

それを、自分が認めたライバル京本にも褒めてもらえた!
しかもなんとライバルは自分の熱烈なファンだった!なんて知ってしまうと、嬉しくて飛び跳ねずにはいられないですよね!

その後、中学生になった2人は一緒に漫画を描きます。
藤野ちゃんが原作。京本ちゃんは背景アシスタントとして。

これまで別々の描き手だった2人が一緒になって1つの作品を作り上げる過程は、大変そうに描かれますが同時に生き生きと描かれています。

2人とも本当に描くことが何よりも好き、漫画が好き、お互いの作品が好きなんだなと伝わります。
キラキラと輝く2人の毎日が夢と期待で溢れて、眩しい幸せな気持ちにさせてくれますよ。

【結】ハッピーエンドでは収められない物語の価値

この映画のエンディングは、「完全無欠のハッピーエンド!みんな幸せ!めでたしめでたし!」ではありません。

前半の2人が愛おしく、心地良い展開で進められた分、後半の苦しみにはかなり胸が締め付けられます。

視聴する前、「チェーンソーマンと同じ原作者」と聞いた時には、正直鬱展開を覚悟していました。
むしろ、どんな鬱展開が来るのか期待さえあったかもしれません。

でも、藤野ちゃんと京本ちゃん、2人の努力と挑戦と、喜びの笑顔を見るうちに、
「鬱展開はやめて…!この後に何も起こらないで…!幸せなまま終わって…!」と願ってしまいます。

作品を見進めるうちに、2人への感情移入は確実に完了されていたのです。
2人が愛おしくて、応援したくて、幸せになって欲しくて、後半に訪れるであろう鬱展開に怯えました。

そしてやっぱり、事前の心構えが無駄に思えるくらいの悲惨な展開があります。
この物語に入り込んだ分だけ苦しくなります。

涙が止まらない悲しみと言うよりは、展開中ずっと胸をおさえて苦しみに耐えなければならない。
そんな展開です。

正しい努力を真っ直ぐな心で続けていれば、全てが丸っとうまくいく。という理想は都合のいい幻想だと思わされます。
正しく努力する人は全ての不幸を避けられる、なんてことは絶対に無いんだと思ってしまいます。

絶望と悲しみの中の藤野ちゃんが呟く少ないセリフは、より強く心を締め付けます。

【感想】「描く」理由と喜び

決してハッピーエンドではありませんが、力強いメッセージを受け取れる物語でした。
藤野ちゃんの覚悟と前に進もうとする強さは、本気で何かを目指す人への心強いエールになります。
特に、専門的なことで成功したい!勝利を掴みたい!と思っている人にとっての説得力ある動機づけにもなるでしょう。

主人公は漫画家の女の子ですが、視聴者が漫画家でなくても女の子でなくても、この作品から受け取れるものは多いです。

個人的には、「本気の気持ちが伴った行動って強いな」と実感できたことは、恩恵でした。
お金でも名誉でもなく、心から「これがしたい!」と思えるものが最初にあって、そこに報酬や賞賛のような二次的価値をプラスしていきたいです。

何かつまずきや不安があった時に、思い出したい作品です。

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